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第3回 とにかく早い。どんどん新しい技術が出てきます。

松山雄一郎

エキサイト株式会社

エンターテインメント事業部 ファンサイトUnit 松山雄一郎さん

音楽や各種エンタテインメントを含め、幅広くインターネットサービスを提供するのが、今回取材に協力いただいたエキサイト株式会社。総合ポータルサイト「excite」でもおなじみです。

今回はそのエキサイトから、モバイルサイトのプロデュースを担当する松山さんにお話を聞いてきました。松山さんは今でも月に10本のライブ参戦は欠かさないという、根っからの音楽好き。

若くしてサイト全体を統括する立場にいる松山さんが考える、音楽業界とウェブサイトとの関係とは??

とにかく早い。どんどん新しい技術が出てきます。~この仕事を目指したきっかけ~

――音楽関係の専門学校に行っていたと聞きました。

もともと音楽が好きで、高校までバンドもやっていました。その時にライブハウスのPAさんやレコーディングに興味を持ち、自分でレコーディングをやりたいと思ったんです。それでレコーディング関係の専門学校に行き、レコーディングスタジオでインターンとして1年ほど働いていました。今の仕事とはぜんぜん関係ないですね。

――まったく違う業種への転職ですが、ウェブ業界にも興味があったんですか?

そうですね。「音楽でビジネスをしたい」と言うと少し大げさですが、自分で売上が管理できる仕事がしたかったんです。レコーディングはあまりそういう世界でもなかったんで。「音楽とウェブ」という関係性はこれから強くなっていくと思って転職しました。

――最初はウェブに関する知識はなかったんですよね?

まったくないです。プロツールス※しか触ってなかったので、エクセルも開いたことがありませんでした(笑)。最初は大変でしたね。 ※注:レコーディングをするためのソフトウェア

――ウェブ業界に入ってみて、新鮮だったことは?

とにかく「早いな」っていう(笑)。なんでもすごく早い。どんどん新しい技術が出てきて、どんどん覚えないといけない。情報の更新の速度もそうですし。そういった部分にはビックリしたかもしれません。

――ちなみにバンドではどんな音楽を?

少し上の先輩がいわゆる"ハイスタ(Hi-STANDARD)世代"で、ボクたちもそれに影響されてハイスタのようなバンドをやっていましたね。

OKをもらえるまで提案。会議室で記者会見を!? ~現在の仕事内容~

――今のお仕事の内容は?

アーティスト系モバイルサイトのプロデューサーをやっています。具体的には、営業的な部分から始まり、実際にアーティストさんに会って「一緒に○○をやりましょう!」と提案をして、そこからサイトにうまく落とし込んでいくまですべてに関わっています。もちろんサイト全体のお金の管理などもやります。

――もっと経験が豊富な年配の方がやる仕事のイメージなんですが……。

どうなんでしょう。たまたまやらせてもらっています(笑)

――最初からプロデューサー職に就いたのですか?

いえ、一番はじめはエキサイトのグループ会社で、もっと音楽に特化した部署に配属されました。そこでは着うたのエンコード業務に1年ほど携わって、その後にプロデューサー職に就いて、今は3年目ですね。

――やっているのはPCではなく、モバイルだけですか?

現時点ではそうですね。特に僕が携わっているのは有料のファンサイトなので、会員がより増えるように、いろいろ提案しています。

――提案してもアーティスト側からよい返事をもらえないことも?

もちろんありますね。でも僕は「じゃあ、どういう提案ならOKをもらえるんだろう」と考えトコトンまでやるので、熱意をかってくれる事務所さんもいます。「また君か」「分かったよ」みたいな(笑)

――どのようにアーティスト開拓をするのですか?

編集会議があるので、そこで他のスタッフと相談しながら考えていきます。あとはライブ会場に実際に足を運んで「いいな」と思ったアーティストに声をかけたりすることもあります。また最近はアーティストの方から「○○のサイト、やってますよね?」みたいに言ってもらえる場合もありますね。「ファンサイトを作りたいんです」と連絡いただいたりとか。すごくありがたいです。

――モバイルを扱う上でも難しさや楽しさは?

今はスマートフォンも増えてきていますが、やはり携帯電話は誰でも持っているもの。多くの人が手軽に持てて、それを活用することでアーティストと近い距離にいることができます。それはモバイルの一番いいところじゃないでしょうか。

――最近のお仕事の中で、一番手応えがあったのは?

あるアーティストのリリースがあり、事務所の方が「記者会見をやりたい」とおしゃっていて。「モバイルを使ってどう記者会見をやればいいんだろう……」と悩んでいたんです。結局、レーベルの会議室を借りて、モバイルサイトの会員さんを招待して、リリースの記者会見をユーストリーム※注:オンライン動画配信サービスで配信しました。

――なるほど。オモシロい!

やはりモバイル関係の仕事をしていると、お客さんの顔を実際に見る機会があまりありません。なので、記者会見に来ていただいたユーザーさんに「オモシロかったよ」と言ってもらえて嬉しかったですね。モバイルという枠を越えて、リアルの部分を絡ませることができました。「こういうことやってくださいよ!」みたいなリクエストもいただけて、僕としてもよい勉強になりましたね。

できあがったページは、自分の子どものようなもの。 ~仕事のやりがい・大変なこと~

――仕事の中でやりがいを感じる部分は?

自分で提案したアーティストのページにGOサインが出て、事務所の方と一緒に、時にはアーティストさん本人と一緒に仕事をすることができる時。そしてそのページができあがった時は、やはりやりがいを感じますね。言わばそのページは自分の子どもみたいなものなので。

――そうですよね。逆に大変な部分はありますか?

会員をどうやって獲得するか。それに尽きます。そのために自分の力だけでなく、上司に相談したり、他の人にも話を聞いたり。あとは他のページを見て参考にしたり。いろいろ勉強していかないといけません。

――会員数を増やすためにはどういった方法があるのですか?

例えば、自社にエキサイトというポータルサイトがありますので、『エキサイトスナップ』や『エキサイトミュージック』など、使えるものはすべて使って告知を行います。さらにモバイル会社さんにもイベントがありますので、そのようなイベントと絡めたりすることで広めたりしていますね。

――PCサイトの『エキサイトミュージック』とモバイルサイトは別なんですね。

そうです。記事を流用することもありますが、やはりパソコンは無料なので、情報を区別しないといけません。たとえばパソコンでは編集版が読めて「残りはモバイルサイトへ」といったカタチをとることもあります。社内で使えるツールを効果的に使って、できるだけアーティストさんに還元できるように努めています。

相談ではなく“雑談”。音楽好きばかりだから、すごくやりやすいです! ~仕事で心がけていること~

――仕事をする上での心がけやモットーは?

事務所の方の考えをなるべく汲み取るようにすることですね。そのために自分もできるだけ事務所の方と近い視点に立って、たとえばアーティストごとの売り出し方を提案できたりするといいですよね。またそういった部分を、あまり固くなり過ぎず、「あ、それオモシロいね」みたいに、"軽いノリ"と言うとおかしいですが、フランクにコミュニケーションをとりながらやっています。他の人はどうなのか分からないですが(笑)

――まさに"楽しみながら"という感じですね。

そうです。すごく楽しんでやっていますね。あとは心がけていると言えば、上司に相談することですね。何でも相談して、チェックしてもらっています。

――社内でのコミュニケーションはとりやすい環境ですか?

はい。部署を問わず、いろいろな人と話しています。やはりみんな"音楽が好き"という共通項がありますし、すごくやりやすい空気ですね。小さいことでも何でも相談して……相談じゃないかもしれないですね。どちらかと言うと、"雑談"に近い感覚があります。

――無料のサービスが増える中、有料コンテンツは難しくないですか?

そうです。そこが難しいところで、そのためにいろいろ試みています。たとえばまずは無料のメールマガジンに登録してもらって、その段階でひとつプレゼントを用意する。そこで取得したアドレスに情報を送って、会員へと誘導する、というのもひとつです。他の方法も含めて、これからも頑張らないといけません。

すべて楽しんでいるので、忙しいという感覚はありません! ~仕事での必需品~

――常に持ち歩いているものってありますか?

会社の携帯と自分の携帯。それくらいですよね。他には別段ないんです。

あとは新しいスマートフォンが出たとか、そういう情報は常に知っておきたくて、ITメディアとかはいつも見ていますね。

――では情報収集はどういった方法で?

音楽系・IT系のニュースはいろいろと見るようにしていますね。それくらいです。あとは実際に自分の目で見ることが大事だと思います。

――夜遅くまで仕事をすることもありますか?

そうですね。ただ、ずっと社内でパソコンを触っているだけじゃなく、なるべく外に出て、ライブハウスにも足を運ぶように心がけています。なのであまり忙しいという感覚はありません。すべて楽しんでやっています。

――ライブには平均すると1ヶ月にどれくらい行きますか?

どうなんでしょう……まあ、月に10本は行ってますね。有名無名を問わず、アリーナクラスのライブも小さな箱にも行きます。小さな箱でこれから頑張っていくようなアーティストと一緒に仕事ができれば、すごく素敵なことですよね。

モバイルという枠を超えて、音楽業界に貢献を。 ~今後の目標~

――近い将来の目標はありますか?

いろいろな人と情報交換をして、新しいことをやっていきたいですね。「何が新しいか」というのは一概には言えませんが、近いところで言うとやはりスマートフォンへの対応。そこは絶対です。あとはモバイルという枠を越えて、音楽に関わるファンサービスをやっていきたいですね。それはPCもそうですし、例えばですがグッズの販売もそう。今の「プロデューサー」という肩書きにしばられることなく、いろいろなことをやりたいですね。長期的に会社の売上げにつながり、かつユーザーの方にも喜んでもらえれば、何をやってもいいと思います。

――では10年後はどうなっているでしょう。

ん?、どうなっているでしょうか(笑)。ただ、どんなカタチであれ音楽の仕事はしていたいと思います。そして、今せっかくモバイルに関係することをやっているので、そこをうまく活かしていくのがいいですね。アーティストとファンに喜んでもらえるように、音楽業界のどこかで貢献できればいいなと思います。

頑張れ! ではなく、頑張っていきましょう! ~メッセージ~

僕も「音楽業界で働きたい」と漠然と考えていましたが、どんな仕事があるのか、ぼんやりとしていてよく分かっていませんでした。やはり容易に想像がつくのは、ソニーさんだとかビクターさんとか、そういったメーカー(レコード会社)さんですよね。でも、例えば僕のようにエキサイトでファンサイトを作るのも音楽業界への携わり方のひとつですし、視野を広くしていけば、様々な仕事のカタチがあって、直接アーティストさんと仕事をすることもできます。なので、あまり固く考えずにやっていければいいと……僕も思っています(笑)。だから「頑張れ!」とかではなく、「頑張っていきましょう!」って感じですね。

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