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第7回 「淡々としているのに、どこかキモいんです(笑)」

鳴田麻未

株式会社ナターシャ

記者 鳴田麻未さん

音楽を中心に、お笑いやコミックなどポップカルチャー全般を扱うニュースサイトとして、絶大な人気と信頼を得る「ナタリー」。大ヒット映画『モテキ』でもフィーチャーされ、さらに注目度は増しています。そして、今回お話を聞いたのが、そのナタリーで記者として働く鳴田さんです。

若くして(弱冠21歳!)取材やアーティストインタビュー、ニュース記事の作成などのお仕事をバリバリとこなす鳴田さん。何と中学生の頃からライターを目指していたというからビックリです。その夢が叶った今、どんな思いで日々の業務に取り組み、そして次に何を目指すのか。お話を伺いました。

中学生の頃から目指していた夢~この仕事を目指すきっかけ~

――まず、このお仕事に就いたきっかけや経緯を教えてください。

入社したのは2009年の8月。ホームページで編集アルバイトの募集を見つけて、応募しました。

――文章を書いたり、編集したりすることに昔から興味があったんですか?

そうですね。今の時代にめずらしいと言われますが、中学生の頃から雑誌でもウェブでもいいから、音楽について書いたり編集することがしたくて。その頃、国語も得意だったんで、音楽やファッション系のライターになりたいと思っていました。

――雑誌とかをよく読んだり?

お金もなかったので、立ち読みも多かったですが、読んでいましたね。あとその頃はライブにいくのがすごく好きで、とにかくライブにタダでいきたくて(笑)。

――タダで行けるのは、ライターさんのメリットですよね。

当時から、ライブに行っては自分のブログにレポートを書いていました。中学2年の時にブログを始めて、ライブレポートやセットリスト(=曲順)を書いて、それが高校になってバイトをし始めると、さらに加速して月に10本くらいは行くようになっていました。

"オリジナル"は"真似"の後~現在の仕事内容~

――現在のお仕事の内容を教えてください。

まずはニュース記事の作成。取り上げるニュースを見つけて、それをもとに毎日原稿を書きます。ニュースの原稿のためにライブに行くこともありますね。あとは特集記事のインタビュー。さらにレーベルのスタッフの方と打合せをすることもあります。

――まさに音楽ライターのお仕事ですね。

今でこそそうですが、最初はバイトとして入ったので、掃除をしたり、備品の買い出しに行ったり、そういうことも並行してやっていました。今もまだまだスキルが足りていないので、自分が書いた原稿を上司に見てもらって、ダメな所はぜんぶ指摘してもらって、そこを直して、という段階を踏んでいます。まだすべてを一人で進められるには至っていません。

――ライターとしての様々なスキルが必要だと思いますが、その辺はすべて独学で?

そうですね。ちゃんとしたレッスンを受けたことはないです。もちろん上司にアドバイスをもらうことはありますし、最初はやはり真似からですね。文章の流れやボキャブラリー、文末の処理など、まずは既にナタリーに掲載されている文章と同じように書くことから始めました。自分のオリジナルな部分は、ちゃんと真似ができてからと思っています。

――ニュースの元となる情報はどのように探すんですか?

毎朝500くらいのサイトを回って探します。私はブログをやっていた時から、自分の好きなアーティストのサイトは毎晩ローテーションで回っていたので、それに関しては苦にはならないですね。

365日が〆切り!~仕事のやりがい・大変なこと~

――タダでライブに行けたり、たくさんCDが聴けたり、音楽が好きな人からすると、すごく良い仕事に思えますが、仕事をする上で大変なことは、どういった部分ですか?

まず単純に仕事量は多いと思います。

――じゃあ毎日遅くまでお仕事ですか?

おそらく一般的な21歳の人と比べると・・・(苦笑)。でも遅いから辞めたいと思うことはありません。また、よく言われることではありますが、例えば月刊誌だと月に1度の校了前に、死にそうになるくらい忙しくなって、校了が出て、ほっと一息ついて、みんなで飲みに行って、また次の月に・・・という月毎のサイクルがあると思います。でもウェブは365日が〆切みたいなもので、毎日なにかしらの情報が公開されて、終わりがありません。

――では一息つけるのはどんなタイミングですか?

何かの節に、手持ちの仕事がパッとなくなったりするのでそのタイミングかな? でもベースの作業としてニュース記事の作成があって、それが常に200~300は溜まっているので、完全に一息つくことはあまりないですね。

――逆にやりがいを感じるのはどんな時ですか?

もちろん大好きなアーティストに会えるのもやりがいですし、さらにそれが仕事としてしっかりつながっていくと嬉しいですね。こういう仕事をやっている上で「ファンです!」というだけでは成立しません。ちゃんと企画が通って、その企画にのっとって好きなアーティストと一緒に仕事ができるとさらにうれしいです。あとは、自分が書いた記事に対して、ユーザーのコメントが表示されるんですが、ユーザーさんに喜んでもらえているのが分かった時ですね。

――では自分の記事が公開された後は、どんなコメントが書かれるかが気になりますね。

はい。情報自体に喜んでくれる人もいるし、「これはいいレポ」とか書いてくれて、原稿自体を褒めてくれる人もいます。アーティスト本人が喜んでくれる時もあります。「役立っているのかな」って感じられる時は本当に嬉しいですね。

――ファンだったアーティストに実際に取材する経験などはありましたか?

ありました! インタビューもありますし、ライブ後に挨拶に行って「大好きです」って伝えることもできました(笑)

――もともと好きだったアーティストと、そうでもないアーティスト、お仕事しやすいのはどちらですか?

私はこの世界に入ったからには、会いたかった人に会うしかない! と思っています(笑)。だから好きなアーティストには積極的に取材に行きたいですね。やっぱりそのアーティストを好きな記者が原稿を書いた方がいいと編集部的にも、私自身も考えています。

この記事を書いている人は・・・~仕事で心がけていること~

――仕事をする上で心がけていることはありますか?

ずばり、自分が書く文章に間違いがないようにすること。誤字脱字や事実誤認の部分です。ナタリーはニュース媒体なので、原稿に間違いがあると、その間違った情報が広がってしまいます。もちろん公開される前に、原稿を書いた人と別の人に間違いがないか確認をしてもらいますが、自分でもミスのないように心がけています。

――誤字脱字をふせぐコツはありますか?

まずは単純にパソコンに単語登録していくことですね(笑)。もっと根本的な面で言うと、よく寝てよく食べて、健康な状態で記事を書くことかな。

――自分なりの文章作成の方法などはありますか?

いきなり書き始めずに、まず頭の中で文章の構成を考えること。サイトに掲載された記事や、レーベルから届くプレスリリースなど元となる情報があるので、それをしっかりと読み込んで、抜き出す部分などを頭の中で組み立ててから、原稿作成にかかっています。

――ではライブのレポートはどのように?

大切なのは、ライブ中にメモをとることだと思います。ナタリーはニュースサイトとして、実際にライブ会場に行ってない人にお知らせする役割もあります。なので「私はこう思った」とか「私はここで感動した」といったような、主観的な視点での伝え方は極力避けて、事実だけを割と淡々と書くようにしています。そのために、私は他のライターさんより細かめにメモをとっているかもしれません。

――でもニュースと比べると、ライブレポートは自分なりのエッセンスも入れやすいのでは?

そうですね。特に自分が好きなアーティストだと、入れようと思わなくてもにじみ出ちゃうみたいで、ユーザーさんからの反応はありますね。「この記事を書いている人はヲタなのか?」みたいな(笑)。普通は知らないようなことも、好きなアーティストだと知ってたりするので、そういう気持ち悪さも出ているのかもしれません(笑)

いつだって、立ちたい!~仕事での必需品~

――仕事での必需品はありますか?

パソコンとiPhoneですね。普通ですいません(笑)

――仕事を離れた時に手放せないものは?

それもやっぱりiPhone(笑)。グーグルカレンダーを見ながら、常にスケジュールを確認しています。

――移動中に必ず見るサイトとかはありますか?

ナタリーとツイッターですね。自分の文章にユーザーさんがどのように反応しているかと見ています。もちろん他の記者が書いた記事も、音楽のところは基本的にはすべて見ます。コミックとお笑いに関しては、ユーザーとして気になった記事を見ていますね。

――他のポータルサイトを見ることもありますか?

ありますね。競合サイトとなるページを見て「向こうでは載っているけど、ナタリーでは載っていない」とか「ナタリーにしか掲載していない」とか、そういう比較を常にしています。

――他と比べたナタリーの色はどういった部分ですか?

淡々としているのに、どこかキモさが見えてしまう(笑)。そういった部分じゃないでしょうか。

――ではネット以外の情報の収集方法は?

ライブハウスによく行くので、そこから得る情報はたくさんありますね。レーベルのスタッフさんからオフレコで教えてもらうこともあります。

――ライブハウスにはどれくらいのペースで?

仕事の関係で行くのと、個人的に行きたいのを含めて、月に10本以上は行きますね。半分以上は個人的に行っています。

――個人的に行ったライブでも、仕事の目線で見てしまいません?

でも、私は関係者席でも楽しんじゃってるタイプ(笑)。関係者席って基本的には皆さんが座っているじゃないですか? いつも「立ちたい!」って思っています(笑)

今の仕事と絡めて、面白い企画を!!~今後の目標~

――では最後に今後の目標を教えてください。

今の私は、自分が子どもの頃からやりたいと思っていたことが、早々に叶えられている状態。なので、ここから+アルファのことをやっていかないといけません。今は仕事の量が多くなってきて、一つ一つの仕事に対して追求しきれていない部分があります。なので、すべての仕事を流れ作業のように扱うのではなく、例えばインタビューの1つ1つにも気合いを入れて、ナタリーとして、そして自分自身のオリジナルな部分を出していきたいです。それを積み重ねていけば、ユーザーさんからも今以上に「お、このサイト、やるな!」って思われるのかな、と。

――ちなみに音楽以外でやりたいことはありますか?

ファッションが好きなので、ファッションを絡めた何かがやりたいですね。とは言っても、ファッション関係の仕事に就きたいわけではないので、ファッション関係の人とつながりを作って、今の仕事と絡めた面白い企画を作れればいいですね。これからは音楽業界以外の人とも、どんどんコミュニケーションをとっていきたいと思っています。

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