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気づかれない声の代弁者

2013年10月2日、無名ながらYouTubeで13万回もの再生回数をはじき出した、異例の新人アーティスト、文月メイがシングル「ママ」でデビューする。まず、彼女の特徴的な声色に耳を持っていかれる。心にずっしりと突き刺さり、鼓膜に直接訴えかけるような声が、特に印象付いた。
1曲目の「ママ」は、決して目を背けてはいけない事実を、生々しく、綴っている。彼女の声と、その歌詞が、心の底まで染み渡って、自分の中で何かに気づかされたような気がした。2曲目「生」は、バンドサウンドで、これもまた違った味が出ている。ただ、やはりその歌詞はリアルで、一切の濁りがない。少し後ろ向きの雰囲気から、徐々に前向きになっていくような歌詞の雰囲気に、安心感が生まれた。
この2曲を聴いていると、気づかぬうちに彼女の世界観に引き込まれていた。音源でこれだけなのだから、きっとライブも深々とした雰囲気に一瞬で飲み込まれるのだろう。是非、生で見てみたいアーティストである。そして、私たちは彼女の綴るリアルな現代の歪みから、目をそらさず、向き合い、気づき、答えを出していかなければいけないのだと心からそう感じた。

宮本貴規