ギタークラフト科とは?

今回、見学&インタビューをさせていただいたのはギタークラフト科、クラフトコース3年生の授業です。ギタークラフトというとギターを作るだけのイメージが、あるかも知れませんが、アンプやエフェクター、ギターの修理も学んでいるんですよ!
そして、一人一人が自分の好きなデザインで、オリジナルのギターを作ることができるんです。まったくギターの知識がない人でも、1番最初の基礎から教えてもらうことが、できるので安心できます。

授業ではいつもどんなことをしているの?

――この授業では、具体的に何を学ぶことが目的なんですか?

先生(以下:宮本):ギターを「作る所から使う所」まで幅広く学んでいます。三年生ともなるとやっていることがみんなばらばらで、自分の好きなギターを作り、自由に作業しています。

――授業内では、クラフトに関すること以外も習いますか?

宮本:ギターの周辺機器のアンプやエフェクターの作り方や壊れてしまった楽器の修理(リペア)も学びます。後は選択制なんですが、ギターが使われるライブ現場でのサポート(ローディー)も学べるようになっています。コースによっては演奏も学びます。

――ギターの知識がまったくない初心者でも、授業を受けていれば、ギターを作れるようになりますか?

宮本:一年生のころは、ギターの基礎知識から学びます。ギターを弾いたことのない人でも作れるようになりますよ!

――一番初めにギターが完成するのは、入学してからどのくらいですか?

宮本:2年制と3年制の1年生でそれぞれタイミングは違いますが、大体6~7月に最初の一本ができます。

――結構早い時期にできるんですね。

宮本:そうですね。上級生だと、特に早い人で二ヶ月に一本のペースでギターを作っていますよ。

――一人で、一から作れるようになるんですか?

宮本:3年生くらいになると、基本的に一人で作れるようになりますね。

――ギタークラフト科での一番大きなイベントは何ですか?

宮本:ついこの間あったんですけど、ギタークラフトコンテストというイベントですね。「俺のギターが一番だ!」という心意気で、自慢の作品たちの中からグランプリを決めるというものなんですが、プロのミュージシャンや(株)ESPの方を招いて、クオリティや演奏面や見た目等の様々な観点で評価をしてもらう大イベントです。

――授業内だけで、毎年どのくらいの材料(木材)を使っているんですか?

宮本:ギターの材料となる木材は板の状態で学校に届きます。平均して一年で二~三本作るんですが、全学年で200名ぐらいなので、年間で400~600くらいの材料は使っていることになりますね。

――たくさん使っているんですね。

宮本:そうですね。なんだか新鮮な質問です(笑)

――授業で最初にぶつかる壁、課題は何だと思いますか?

宮本:一番最初に習うのが刃物の研ぎ方なんですけど、生きている中で刃物を研ぐってなかなか無いじゃないですか。みんな初めてやることになるので、最初は難しく感じると思います。

――大変な作業なんですね。

宮本:難しいと感じるかもしれませんが、これは日々の練習だと思っています。入学して一番最初が研ぎの授業なので、こまめに練習すれば上級生になるころには普通にできるようになりますよ。

――ESPの工場には、授業で頻繁に行くんですか?

宮本:授業日に工場見学できるタイミングがあって、そのときに行きますね。

――海外研修に参加する学生はいますか?

宮本:毎年40~50人くらいは参加しています。

――海外研修の良いところは何ですか?

宮本:なんといっても世界最大級の楽器のお祭りであるNAMM showが見学できることですね。実はこれ業界の関係者しか入れないんですけど、ESP学園生は特別に見学することできるんです。見たことも無いギターがたくさん見られます。後は単純にアメリカにいけるというのも楽しいところですね。

――世界最大級ですか、実際に見たんですか?

宮本:1日じゃ見きれないほどですよ!あれは楽器好きなら楽しくないはずありませんね。

――アーティストとのコラボ企画では、実際にアーティストと打ち合わせを何度もしているんですか?

宮本:年によって変わりますが、今年の打ち合わせは一回ですね。ただ、連絡を取り合って仕様を確認したりは何回かありましたけどね。

――アーティストとのコラボは毎年、行っているんですか?

宮本:そうですね。7~8年前からは毎年行っています。

――ギタークラフト科が作った楽器は、他の学科などが実際に使用したりするんですか?

宮本:学校のライブイベントでミュージシャン科の学生さんに弾いてもらったりしています。人によっては「友達にギターを作ってます」という学生もいますね。

――ギタークラフト科で一番良かったと思えるのは何ですか?

宮本:一番良かったのはギターがより好きになりました。なによりギターを作ることが楽しいです。入学するまでは弾いていただけだったのが、作ることも覚えられたことですね。

――ギタークラフト科で特に普段から気をつけていることはありますか?

宮本:ここを出たらみんな社会人になっていくので、「遅刻はしないように」とかは普通に言ったりしますね。他には、作業をミスしても注意したりはしませんけど、怪我につながらないように、安全上のアドバイスはどの先生も毎日言ってると思います。

――この学科の理想は何ですか?

宮本:楽器のお仕事といっても作ったり修理したりだけでなく、いろいろなお仕事があるので、卒業していく学生たちにはそれぞれの分野で楽器業界を盛り上げる人になってほしいなと思っています。

――ギターを作る過程で最も難しいと思う工程はなんですか?

宮本:木工や塗装、調整などギター製作ってたくさんの工程があるんですけど、それぞれに難しさはあります。在校生が苦戦しやすいのは塗装ですかね。

――塗装ですか。

宮本:スプレーガンを使用するんですけど、筆で塗るわけではないので感覚をつかむまでは失敗してやり直すこともあります。塗装は知識だけでなく経験が特に必要な分野ですね。

――ギターは自分の好きなデザインを作ることができるんですか?

宮本:そうですね。1年生の1本目だけは課題で決められたものを作って基本を学びますが、2本目以降は自由なデザイン・仕様で作ることができます。

――学年があがったらそれぞれ自分の得意分野の作業に分かれたりするんですか?

宮本:3年制では3年生になったら、リペアやアンプ・エフェクターに特化したコースにも進めます。得意分野というよりも、やりたい分野をより深く学べる感じですね。

どんな職業につながるの?

――ギターを製作する仕事に就くには、何か資格が必要なんですか?

宮本:資格は何にも要らないです。なんか分かりやすく資格とかあったらいいんですけどね(笑)

――就職は都内にする人が多いですか?

宮本:都内に住んでいる学生は都内での就職が多いですね。でも例えば、楽器を作る楽器工場で働きたいという人は、埼玉、長野、愛知などに工場が多くて、メーカーや楽器店などでも地方にある会社はたくさんあります。希望の職種によって変わってきますし、実際に全国で卒業生が働いています。

――工場は東京には少ないんですね。

宮本:そうですね。やはり大きな工場は郊外でないとできないので。ただESPは埼玉に工場があるので、珍しいほうだと思います。

――海外で就職される方もいるんですか?

宮本:海外の会社に就職というのは少ないですが、日本企業でもギターメーカーの仕事に就くと、海外勤務もめずらしくありません。

――先生は、何でギタークラフト科の先生になろうと思ったんですか?

宮本:恥ずかしいな(笑)もともとESPの学生だったんですけど、今はもういないんですけど一年生のときに教わった先生がめっちゃかっこよくて、こんな風になりたいという憧れですね。今となっては、ギター製作をもっと広めていきたいなと思っていて、いろんな若い人たちと共有したいなという思いも強いです。

――実際に夢が叶ってすごいですね。

宮本:本当にうれしかったですね。

――最後に学科での、これからの展望はなんですか?

宮本:さっきの理想に近いんですけど、やっぱり楽器人口がもっと増えることですね。

インタビューしてみて

今回インタビューをさせていただいて感じたのは、ギタークラフト科の皆さんは一人一人がとても集中して自分の作業を行っていて、まさに職人さんのようだなと思いました。そしてインタビュー中も学生の皆さんが、気さくに話しかけてくれたおかげで、楽しく充実した、内容の濃いインタビューになりました。また3年生になると1人で1からギターを作っていると知って、とてもすごいと思いました。

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